四つ葉のクローバーを探すのが好きになったのは、平戸に来てからだ。

今から20年前ごろに、会社員を辞めて独立した後、時間に縛られなくなって、一日の過ごし方がフリーになっただけでなく、人生観や価値観も含めていろいろなことから自由になったけど、10年前に平戸に引っ越してからは、もっと時間がゆっくり流れ始めた。
人生の舵を大きく切ったことでの気持ちの変化が大きかったのかもしれない。

今思うとなぜか、僕が平戸で好んでいく先々にはシロツメクサが生えている。
一面の緑の中に、シロツメクサの花が咲いているのが僕は好きだ。

初めて四つ葉のクローバーを見つけたのは、今から7~8年前のこと。
越してきて2年ぐらい経った頃だった。

大好きな海岸でベンチに座っていると、ベンチの周りにはシロツメクサがたくさん生えていた。

そのときふと頭に浮かんだ。
「四つ葉のクローバーって見つけられるのだろうか」と。

それまで、四つ葉のクローバーを探すってことをしたことがなかった。
心のどこかに、見つかりっこないという思い込みがあったような気がする。

そしてその時おもむろに「じゃあ、とりあえず真剣に探してみよう」と思ったのを覚えている。

どれくらいたっただろうか。
多分10分弱ぐらいだったと思うけど、
ひとつの四つ葉のクローバーを見つけたのだった。

おそらく生涯ではじめて自分で見つけた四つ葉のクローバーだった。

「やった。みつけた。」
「四つ葉のクローバーを見つけられた」
「見つかるものなんだ」

それは5月ごろだったとも思うが、それからというもの、シロツメクサの大群を見つけては、四つ葉のクローバーを探すようになった。

今では四つ葉のクローバーを見つけるのは僕の得意技といってもいい。

じつはそもそも四つ葉のクローバーが気になるようになったきっかけは他にある。

あれは2005年。1年前から僕は、当時住んでいた街の生涯学習講座で韓国語講座に通っていた。
その講座では受講生を中心として、韓国の慶州の人と文化交流があり、一年に1回お互いに訪問しあう、2泊3日の交流会があったのだった。交流会自体は民間主催。いわゆる草の根交流だ。2005年の春、僕も慶州を訪問した。その交流会では1泊だけホームステイするのだが、僕らも慶州の韓国のある家にお邪魔させてもらった。その受け入れをしてくれた人が、僕に四つ葉のクローバーをプレゼントしてくれたのだった。取ったばかりの一輪の草を手渡され、どうやって持って帰ろうかと思ったが、とっさにその時持っていた、ちいさな韓国語会話の本にはさんだのだった。
いまでもその時の思い出として、そのままはさんでいる。

四つ葉のクローバーを手にすること自体初めてだったが、人からもらわなければ、実物をみることはなかったかもしれない。

今もその四つ葉のクローバーはその本の中にある。
たまに本を広げてそれを見ると、なんだか嬉しさのようなふわっとした気持がこころにわいてくる。
四つ葉のクローバーにはそんな働きがあるような気がする。

四つ葉のクローバーは人をしあわせな気持ちにさせてくれる。
しあわせな気持ちでいると、自然にいいことを引き寄せるものだ。だから、四つ葉のクローバーを見つけるといいことがあるというのだと思う。

近頃僕も、あの時韓国のひとがしてくれたように、このしあわせを誰かにおすそ分けしたいと思い始めている。