ラムネを買ったのを忘れていた。

気晴らしに何か飲もうと思って、店の厨房の冷蔵庫を何気なく開けたら
ラムネが入っていた。数日前、近所の酒屋でラムネが売っていたのを見て
1本68円という安さにつられ、何気なく買っていたのを忘れていたのだった。

付属のプラスチックの栓開けを飲み口に当てて、ぽんとたたくと
ビー玉がカランと中に落ちて、プシュッと言って栓が開いた。

瓶を持っておもむろに飲んだ。

すると自然に腰に手をあてていた。

ラムネを飲むときはなぜかこうだ。

いや、瓶のコーヒー牛乳を飲む時もそうだ。

20代のころ、地下鉄で通勤していたとき、駅の売店で
いつもコーヒー牛乳を買ってその場で立ち飲みしていた。
そして、なぜかついやってしまう、腰に手を当てるしぐさに気づき
心の中で照れながら、すうっとその手を下していた。
なぜか毎回そうなるのが不思議だった。

今、こうしてラムネを飲んでいて、ふと
「ラムネは銭湯につきものだよね」と考えたが
いやいやそうか?と自問自答しながら、
子どもの頃のことを思い出していた。

お風呂のある家に住むようになったのは、小学校に上がる前の5歳から6歳のころだったから、その家に住む前までは近くの銭湯に通っていた。

銭湯と言えば、風呂上がりに飲み物を飲むイメージがあるが
全くその通りで、そんなに小さかったころの記憶ながら、
風呂上がりの飲み物はとても楽しみだった。
父と兄と三人で男湯に入ったときは、父が風呂上がりに買ってくれていた。
(ごくたまに母に連れられて行ったときは、母は飲ませてくれなかった)

ラムネの思い出をつもりでこれを書いているが、
その小さいころに飲んでいたのは、実はラムネではない。
小さいころは、炭酸が飲めなかったのだ。
だから僕は、フルーツ牛乳だった。
乳白色のオレンジ色やら緑色やらの不思議な飲み物。

5歳年上の兄と父はラムネを飲んでいた。

その特殊な形をしたなかにビー玉が入った
うっすら青い透明のびんがカッコよかった。

僕も兄や父と一緒のラムネが飲みたかった。

フルーツ牛乳がおいしくないわけではなかったが、
それほど好きではなかった。
フルーツ牛乳は小さい子どもの飲み物だったのだ。

だから、こうして今
ラムネを飲んでいると
ラムネって大人の飲み物のような気がしてならない。

子どもの頃の記憶がよみがえって
少ししあわせな気持ちになった。